経路検索サービス大手、ジョルダン株式会社の 「乗換案内」 は、iPhone アプリケーション広告媒体のパートナーとして
AdMob を選択しました。
「複数のアドネットワーク サービスを比較検討した結果、アプリケーション向け広告在庫が最も充実していたという点と、それ以上に自社広告を柔軟に扱える機能を備えている点を評価しました」と、選択の理由を話すコンパスティービー株式会社取締役で広告担当の赤津安昭氏。
導入から約 1 年が経ち、最近では月間の広告動向の仮説に従って、自社広告とAdMob 広告の表示比率を日々細かく調整しながら、収益の最大化を図っているそうです。
導入の経緯 : iPhone 経由の検索数がいよいよ無視できない規模に
「乗換案内」の iPhone アプリケーション版は 2008 年末にはリリースされていましたが、AdMob の導入を決めたのは 2010 年 2 月、有料版のリリースとほぼ同時期でした。
「最初は収益のことは考えずアプリケーションの普及を優先させたのです。翌 2009 年の夏頃から iPhone ユーザー数が急激に伸び、それに伴ってダウンロード数も急増してきました。2010 年 3 月には iPhone 経由の検索件数がパソコンでの検索件数を越え、いよいよ iPhone アプリケーションのビジネス化が、弊社の中で無視できない存在になりました」(長岡氏)
「乗換案内」無料版はより高機能な有料版にユーザーを誘導する導線であり、自社媒体として活用するというイメージを明確に持っており、広告の導入はあくまで補完的な位置づけでした。
「まずは気軽にダウンロードできる無料版で数多くのファンを獲得してから有料版にバージョンアップしていただく、というビジネスモデルは i-mode 普及の頃と全く変わっていません。しかし今回、アプリケーションに広告を入れるということで今までよりも慎重になりました」とジョルダン株式会社営業技術部 サブマネージャの長岡豪氏が強調します。
「ウェブであれば、いろいろ試しても更新すればすみますが、アプリケーションの場合は世に出てしまうと、その後バージョンアップして他のアドネットワークサービスに変えましたといっても古いバージョンもユーザーの手元に残ってしまいます。ユーザーに迷惑をかけないために、利用するアドネットワーク サービスを途中で変えたくないという考えがあったので、最終的にこれで行くと最終決定するまでにどうしても時間がかかってしまいました」
導入の理由 : アド ネットワーク + アド サーバーとして柔軟に使えるのは AdMob だけ
赤津氏らは約 3 ヶ月間、何社ものモバイル向けアドネットワーク サービスを比較検討。最終的に AdMob をパートナーに決めた理由は 3 つあったといいます。
「当社として一番大きなポイントは『自社広告が扱えるかどうか』でした。しかも他社広告と自社広告の比率を管理画面上で設定できる機能があり、そのことが決め手でした」
1つ目は、AdMob ではインプレッション比率をリアルタイムに設定できるため、例えば「新サービスをリリースしたので一気に告知したい」というとき、他社広告は配信を止めて 100 % 自社広告を配信する、というように柔軟に運用できることが、自社広告を重視している乗換案内には重要なポイントでした。
2つ目のポイントとして「AdMob は、スマートフォン向けのアドネットワークとしてかなり先行していたこと。日本の広告主も既に広告出稿していましたし、広告が実際に配信されている状況を導入前に見て確かめることができました。 『貼ったはいいけど、広告在庫がない』 という時期がなく、他社広告を配信する設定にすれば途端に収益が生まれる、それはとてもよかったです」。
3つ目に高く評価されたことは、AdMob の管理画面の使いやすさでした。
「AdMob のインターフェースは非常によくできていると思います。PC 向けアドネットワークサービスで AdSense を活用しており、管理画面が似ていて最初からとっつきやすかったですね」。
導入の効果 : 有料版販売と広告をうまく組み合わせて、収益化の最大化を図る
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ジョルダン株式会社
営業技術部サブマネージャー
長岡豪 氏 (左)
コンパスティービー株式会社
取締役
赤津安昭 氏 (右) |
「乗換案内」への AdMob 導入から約 1 年が経ち、現在の運用状況を尋ねてみました。
「今の段階では、ちょうど有料版アプリケーションの販売収益と AdMob の広告収益が両輪になっているなという感じがします。」 経路検索アプリケーションの特性として毎日使われる反面、『またこれか』と次第に広告を見慣れてコンバージョンが低下するのは避けられません。そこにある一定の比率でアドネットワーク広告を配信していくと、コンバージョン回復のよいエッセンスになるということがわかってきたといいます。
細かく運用テストをしてみた結果、100 % 他社広告でも
100 % 自社広告でもだめで、微妙な比率にバランスを調整したときに、収益性が最も高まる傾向があると赤津氏は感じています。
「最近、今はこれくらいの比率で自社広告をまわそう…とか、この時期なら AdMob の広告を増やしたほうが効果的だとか、だいたいの月間変動パターンがつかめてきたところです」
今後の展望 : モバイル広告のバリエーションの広がりに期待
最近、特に日本のアプリケーションやゲームなど、AdMob から配信される広告の幅がとても広がってきたことを実感しているといいます。また、アプリケーション関連の広告ばかりでなくブランド系の広告も増えています。
「iPhone は画面も大きいためか、きちんと広告が見られているなと感じます。これまでの携帯電話向け広告では普及しなかったブランディング広告や動画など、スマートフォンの特性を生かした新しい広告商品が今後生まれてくるといいですね。アプリケーション向け広告の可能性に期待しています。
また、今年は Android ユーザーが増えてくるでしょう。Android 版の乗換案内アプリにはまだ AdMob を導入していませんが、ユーザー数をにらみながら検討したいと考えています」(赤津氏)。
一方長岡氏は、広告の導入はユーザーの心情を第一に慎重に考えるべきだという点を強調します。
「『乗換案内』では、サービスの特性上起動・入力・結果表示が早いというのがアプリの命と考えていますので、その期待を裏切らないような開発を心がけています。たとえば経路検索中は広告で邪魔をしない、オーバーレイ表示にしないなど。結果画面でも表示を遅れさせないよう、一度カラの枠にして広告の位置だけ を確保して、結果を表示し終わった後に広告を読み込み直すという仕様にしています。 また、これからは Android 系の横表示など、様々な画面サイズの端末が出てくると思うので、AdMob も豊富なサイズや表示位置が選べて細かく仕様を合わせられるようになるといいな、と思います」(長岡氏)。
1979 年、株式会社ジョルダン情報サービスとして設立。
1994 年に「東京乗換案内 for Windows 3.1 」を発表以降、「乗換案内」を進化させ続け、経路検索サービスで常に上位を占める。
ウェブサイト版、i-mode 版と拡大し、2008 年 12 月には iPhone アプリケーションにも進出した。無料版はこれまでに 250 万ダウンロードを越え、AppStore の無料版 (ナビゲーションカテゴリ) の第 1 位を常時キープしている。(2011年2月現在) 2010 年には Android アプリも発表、こちらもすでに 100 万ダウンロードを数える。
最新の情報として、2011年3月3日にAndroid向け高機能有料アプリケーション「乗換案内Plus」をリリース。「乗換案内Plus」は「乗換案内」に要望の高かった機能をプラスしたもの。 検索結果の保存や、検索結果からの列車調整、定期代検索や青春18きっぷを利用した経路検索などが搭載されている。